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【終了】草アーカイブ会議2「コミュニティ・アーカイブってなに?」



開催趣旨:
風景、物語、暮らし、仕事、戦争など、地域での出来事や文化について記録し伝える取り組みが各地で行われています。それらの多くは、専門家や地域に住むさまざまな立場の人々によって、草の根的に展開されています。今回は、そのような地道なアーカイブ活動の現場から、資料を「提示・表現」する、あるいは対象を「記録・収集」していくプロセスに着目し、伝承に向けた真摯な態度により磨かれ高められていく「アーカイブ活動の創造性」に迫ります。

日時:2017年12月23日(土) 14:30-17:30
   2017年12月24日(日) 13:00-16:00
会場:せんだいメディアテーク 1f オープンスクエア
料金:参加無料/申込不要/直接会場へ

プログラム:
1日目【提示・表現】ー「痕跡とアクチュアリティ~鉱山、通信所、終戦、ホーム~」

スピーカー:
小岩勉(写真家)
坂田太郎(サイト・イン・レジデンス)
瀬尾夏美(画家・作家)
松本篤(NPO remo メンバー/AHA! 世話人)
モデレーター:
桂英史(東京藝術大学大学院映像学研究科教授)

14:30-14:40 はじめに
14:40-16:00 各活動の紹介
16:00-16:10 休憩
16:10-17:30 ディスカッション+質疑

2日目【記録・収集】ー「土着の魂・旅人の目~カセットテープとインターネット~」

スピーカー:
小野和子(民話採訪者)
川瀬慈(国立民族学博物館人類基礎理論研究部准教授)
ヴィンセント・ムーン(映像作家・サウンドアーティスト)
モデレーター:
佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授)

13:00-13:10 はじめに
13:10-14:40 各活動の紹介
14:40-14:50 休憩
14:50-16:00 ディスカッション+質疑

→チラシのダウンロードはこちら





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【提示・表現】

「痕跡とアクチュアリティ~鉱山、通信所、終戦、ホーム~」
草の根的アーカイブ活動の多くは、出来事を記録・収集すると同時にそれを直接経験してはいない人々に届くよう編集し、展示や上映、出版、ウェブで公開するなど様々な提示をおこなっています。そこではときに、博物館のように客観的な歴史的価値に重きをおかず、資料から過去の事象の痕跡をすくいだし、紡ぐことで、見る者に生きた記憶として立ち現わせるような「提示・表現」の工夫がなされます。宮城県細倉鉱山を撮り続けた寺崎英子氏のネガを保存するプロジェクト「細倉を記録した寺崎英子の写真アーカイブ」を展開する写真家の小岩勉氏。横浜市の米海軍深谷通信所返還を機にアーティストらとともにリサーチするプロジェクト「サイト・イン・レジデンス 環世界」を行う坂田太郎氏。震災後に陸前高田に小森はるか氏とともに移り住み、丁寧な対話によって作品を制作、近年は新たに戦争の記憶に取り組む瀬尾夏美氏。そして、AHA![Archive for HumanActivities/人類の営みのためのアーカイブ]を始動させ、8ミリフィルムや写真などの「市井の人びとによる記録」を用いた場づくりを各地で行う松本篤氏。彼・彼女らは、いかにして対象となる資料や人との対話から、他者の生きた記憶として立ち現わせるアクチュアルな状況づくりに取り組んできたのでしょうか。課題や葛藤についてお話しいただき、会場のみなさまとともに考えます。


スピーカー:

《細倉を記録した寺崎英子の写真アーカイブ》
宮城県にあった細倉鉱山を記録した寺崎英子が遺した約1万3千カットのネガを整理・保存し、写真集刊行を目指している

小岩勉◉写真家。1962年岩手県生まれ。労働運動などを撮影後、1988~91年に原発のある女川町を長期取材し、写真集『女川海物語』(カタツムリ社)を出版するなど、写真を用いて生活の一部を記録することの意味を探求している。


《サイト・イン・レジデンス 環世界》
米軍基地であった米軍深谷通信所が返還されたことを機に、そこで急速に変化する風景をアーティストと協働でリサーチ

坂田太郎◉サイト・イン・レジデンス/P3 artand environment リサーチャー。1980年神奈川県生まれ。これまで、P3ではAAF2006~08年事務局を、アサヒ・アートスクエアでは寺内大輔、岩渕貞太、蓮沼執太、山城大督との協働プロジェクトを担当。現在は自宅のある横浜で、急速に変化する風景をアーティストとリサーチする「サイト・イン・レジデンス」を展開。


《遠い火|山の終戦》
終戦の前後の日常的な話を聞いてまわり、かつてそこにあった風景が鑑賞者の身体で結ばれるような場をつくる

瀬尾夏美◉画家・作家。1988年東京都生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら、絵や文章をつくる。2012年より、映像作家の小森はるかとともに岩手県陸前高田市に拠点を移し「波のした、土のうえ」を発表。横浜トリエンナーレ(2017)など多数の展覧会に出展。


《AHA! [ Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ]》
8ミリフィルムやアマチュア写真といった「市井の人びとによる記録」の価値に着目し、アーキビストなしのアーカイブづくりを模索する

松本篤◉remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]メンバー。1981年兵庫県生まれ。2005年よりAHA!を始動。近年は、井の頭自然文化園にいた象の〈はな子〉の記録と記憶を集める取り組み「はな子のいる風景」を実施。また、東京大学大学院学際情報学府博士課程に在籍しコミュニティ・アーカイブの研究を行っている。


モデレーター:

桂英史◉東京藝術大学大学院映像研究科教授。1959年長崎県生まれ。図書館情報大学大学院修了。専門はメディア研究。せんだいメディアテークなどの公共文化施設のプランニングに携わる。またデータベースやアーカイブの構築を実践しながら、近代以降の社会思想とメディアテクノロジーが知のあり方に与えた影響を考察している。主な著書に『人間交際術』(平凡社新書)、『東京ディズニーランドの神話学』(青弓社)、『インタラクティブ・マインド』(NTT出版)、監訳書に『世界の図書館』(河出書房新社)などがある。

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【記録・収集】

「土着の魂・旅人の目~カセットテープとインターネット~」
記録・収集活動においては、ときに対象となる人々の領域に分け入らなければなりません。旅人(よそ者)という立場で各地域に入り込み、その土地の出来事を記録するということは、異なる文化や言語、習慣をもつ他者との対話を意味します。たとえ伝承という目的があるにせよ、よそ者であることに違いなく、そのような他者と向き合うとき、記録を行う態度、聞く姿勢、そして対象者との関係性については、どのように考えられてきたのでしょうか。45年以上にわたって宮城県の民話の採訪活動(聞き取り)を行っている小野和子氏。自身も映像を撮りながら、アフリカの音楽を研究する映像人類学者の川瀬慈氏。そして、これまで世界各地を旅しながら圧倒的な映像美と録音技術で各地の音楽や宗教的儀礼を集積してきたアーティストであるヴィンセント・ムーン氏の3者に、それぞれの活動における「記録・収集」の取り組みについてお話しいただきます。「旅人の目」をもってして、その土地固有の「土着の魂」に触れようとするこれらの取り組みは、草の根的でありながらトランスローカルなアーカイブ活動に取り組む態度、その社会的意味、聞くことや対話の大切さ、伝承の不/可能性など、さまざまな視点に気づかせてくれることでしょう。


スピーカー:

《みやぎ民話の会》
「民話」と総称される口承伝承を、宮城県を中心に採訪し、音声資料・文字資料として記録。記録した民話の刊行物や語り部の育成も行う


小野和子◉民話採訪者。1934年岐阜県生まれ。1970年から宮城県を中心に東北地方の民話採訪活動、民話集の編集・編纂に従事。1975年に「みやぎ民話の会」を設立。2012年より記録してきた民話の保存、利活用を目指す「民話 声の図書室」プロジェクトをメディアテークとの協働で開始する。


《主にエチオピアを中心に、アフリカの音楽文化に関する人類学研究や民族誌映画制作に取り組む映像人類学者》


川瀬慈◉国立民族学博物館人類基礎理論研究部准教授。専門は映像人類学。1977年岐阜県生まれ。人類学、シネマ、コンテンポラリーアートの交差点から、文化の記録・表現の地平を開拓する。代表的な映像作品に『ラリベロッチ』、『僕らの時代は』、『精霊の馬』、『Room 11, Ethiopia Hotel』等がある。



《遊牧民のごとくバックパックひとつで世界を旅し、現地の伝統音楽や宗教的な儀式などを映像で記録するアーティスト》

ヴィンセント・ムーン◉映像作家・サウンドアーティスト。1979年パリ生まれ。路上やカフェなどにミュージシャンを連れ出し、即興パフォーマンスを記録する「Take Away Shows」シリーズで一躍名を馳せる。2008年からは遊牧民のごとく世界を旅し、現地の伝統音楽や宗教的な儀式を映像で記録。フィールド撮影された映像や音源はCCライセンスのもとインターネットで共有されており、従来にない映画の制作とその流通の方法を探求している。


モデレーター:

佐藤知久◉京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授。1967年生まれ。専門は文化人類学。アートと社会運動の接点からひろがる新たな地平について、文化人類学的な観点と方法をもりこみながら研究する。近年は主に、せんだいメディアテークの「3がつ11にちをわすれないためにセンター」を対象に、震災後の個々人の記録活動や、公共施設としてのアーカイブ/プラットフォームのあり方について調査し、『コミュニティ・アーカイブをつくろう!』(晶文社)を出版。

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メディアテークにおけるアーカイブ活動:
せんだいメディアテークでは、草の根的なアーカイブ(コミュニティ・アーカイブ)活動を行う市民にスタジオの環境や機材等を無償で提供し、その成果を公共財として記録・発信する仕組みを持っています。これまで多くの協働者とともに、地域の出来事を記録し伝える取り組みをおこなってきました。メディアテークの持つ機材やノウハウを提供し、市民とともに協働しながら行う「記録・収集」。その素材を持ち寄って、上映会や展示の場をひらく「提示・表現」。スタジオを拠点とするプラットフォームにおいて、2つのプロセスを行き来しながら、ともに考え、対話し、集められた記録を地域のアーカイブとして育てています。


草アーカイブとは:
ここで言う「草アーカイブ」とは… ①「草の根アーカイブ」の略称。 ②野球には、一流の技や勝ち負けを競う「プロ野球」と、上手い下手にかかわらずいろんな人が混ざって楽しむ「草野球」があります。次の世代に過去・現在の記録を伝える「アーカイブ」づくりも、専門家=プロだけに任せっきりにするのではもったいない。誰もが関わることができる、ごく日常的な文化活動としてのアーカイブ。それが「草アーカイブ」です。(英語では一般的に「コミュニティ・アーカイブ」という言葉が使われています)

出版予定:
コミュニティ・アーカイブをつくろう!
せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記

せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」は、震災を切り口に、映像や写真などさまざまなメディアを用いて、地域の文化を探る/知る/受けつぐ/伝えるための奮闘を重ねてきた。多くの市民やアーティストとともに取りくんだ、集団による「草の根アーカイブ活動」のキモを探る、実践的記録。
[ 著 ]佐藤知久、甲斐賢治、北野央
[企 画]せんだいメディアテーク
[発行者]晶文社
[発売日]2018年1月11日
[価 格]1,800円(予定)

同時開催:
細倉を記録した寺崎英子のまなざし展
2017年10月7日(土)̶12月26日(火)
9:00̶22:00( 最終日17:00まで)
せんだいメディアテーク 7f ラウンジ
入場無料
入場無料
→詳細はこちら


主催:せんだいメディアテーク(公益財団法人 仙台市市民文化事業団)
仙台市市民文化事業団 30周年記念事業『 コミュニティ・アーカイブをつくろう!~せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記』 出版記念フォーラム

お問い合わせ:
せんだいメディアテーク 企画・活動支援室 
980-0821 仙台市青葉区春日町2-1/tel 022-713-4483/fax 022-713-4482/e-mail office@smt.city.sendai.jp

センターについて

せんだいメディアテークでは、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)を開設しました。

3がつ11にちをわすれないためにセンター
(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室内)

〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町2-1

TEL 022-713-4483

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