宮城県には、現在では海とは縁遠いような場所にも「仏像・ご神体が流れ着いた」という種類の伝説が点在しています。仙台市太白区にある蛸薬師堂にも同様の伝説があります。舞台八幡神社の隣に建立されたこのお堂には「観音様に蛸がついてこの地に打ち上げられた」という伝承があります。この伝承の詳細はよくわからないものの、慶長16年の大津波と関連して語られているようです。
舞台八幡神社と境内が一緒になっており、向かって奥が蛸薬師堂(蛸薬師如来)の参道です。舞台八幡神社と蛸薬師堂(蛸薬師如来)のそれぞれの参道が左手に向かって平行に延びています。
正面から見た蛸薬師堂。
由緒書きと灯篭(写真上)。灯篭にも蛸が描かれています。ただし、平成14年に作られた由緒書きには、「蛸が乗った観音様」の話は書かれておらず、口伝によって伝わっているようです。
奉納された絵馬。流れ着いた観音様が薬師如来とあがめられたか、あるいは流れ着いたところに薬師堂があったのかもしれません。薬師如来は病苦を癒すとされ、それと「タコ」が結びついたのでしょうか、皮膚科系の病気治癒の願いが多いように見受けられました。
(写真はすべて 2013年8月19日 宮城県仙台市太白区長町4丁目2-12にて撮影)
【参考文献】
飯沼勇義著『仙台平野の歴史津波 巨大津波が仙台平野を襲う!』1995年、宝文堂