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荒浜・藤塚住居調査 風呂02-浴槽

●風呂/浴槽

 

《五右衛門風呂 別棟》

:モルタル金鏝押え
腰壁:灰墨(松煙墨)モルタル金鏝押え、デザインタイル張
浴槽、台:灰墨モルタル金鏝押え、鋳物壷
出入口床:レンガ敷き
※右側焚き口

一つだけあった薪で沸かす五右衛門風呂。
別棟の浴室はいつまで使用されていたのか。
黒い灰墨モルタル塗の鏝押さえが丁寧。黒い壁のタイルがおしゃれ。
大家族だったに違いない遠い昔の暮らしがしのばれ、自分の過ぎ去った記憶と重ね合わさる。
ここは文化の吹き溜まり。

撮影地区:荒浜
撮影日:2012年5月2日

 

《ポリエステル樹脂》

:100角半磁器タイル張り
:玉石モザイクタイル張り
浴槽(造り付け):ポリエステル樹脂製
浴槽が工業製品のステンレス製やポリバスに代わった時、新しい時代が始まった事を感じた。
これ以前は造り付け浴槽時代で、ガスや石油を燃料とする循環式ボイラーが使われ、
トイレや浴室は室内に取り込まれ、子供たちは五右衛門風呂等の風呂焚きから解放された。

撮影地区:荒浜
撮影日:2012年1月12日

 

《ステンレス》

:100角半磁器タイル張り
:デザインモザイクタイル張り
浴槽:ステンレス製

撮影地区:荒浜
撮影日:2011年12月30日

 

《ステンレス》

:角モザイクタイル張り
:モルタル鏝押え
浴槽:ステンレス製

撮影地区:荒浜
撮影日:2011年11月27日

 

《ポリエステル》

浴槽ポリエステル製
浴槽廻り150角半磁器タイル張り
手前右脱衣室床モザイクタイル張り
手前左トイレ床モルタルカラークリート仕上げ

浴槽周りの市松模様のタイルが素敵。
これだけで浴室は充分。趣味のよさが光っている。

撮影地区:藤塚
撮影日:2013年3月29日

 

《ステンレス》

:デザイン磁器タイルユニット張り
浴槽:ステンレス製
浴槽廻り:デザイン150角タイル張り

草が生えて痛々しいが、床と浴槽周りのタイルのデザインは調和してとてもおしゃれ。
洋風の趣味がとても素敵な家族の住まいに違いない。
それ以後の家族に思いを馳せる。

撮影地区:藤塚
撮影日:2013年3月29日

 

《ユニットバス》

ユニットバス
新しい住宅のユニットバス。
メーカーの工場生産品なので個性や手作り感がないが、設備機器として研究は進み、機能や価格は万全。
これ以前の浴室は新築ではもうなくなった。
被災地の悲劇は変わらない。

撮影地区:荒浜
撮影日:2011年12月29日

 

■詳細解説「私と荒浜・藤塚地区とのかかわり」髙橋親夫


私は震災後まもなく若林区荒浜・藤塚地区に入りました。その後、数ヶ月にわたって何度かこの地を訪れ、行くたびに茫然とその光景を眺めていましたが、やがて破壊された家財や建物が取り除かれてゆき、その下から荒浜や藤塚地区のそれまでのたくさんの住居跡が現れました。この地域に地層のように残されていた生活時間や文化の重なりは、佇んでいた私にたくさんのことを語りかけてきました。私は自分の生い立ちと重ねながら、残された「家」の声を聞き取ることに夢中になっていきました。

それぞれの住宅を訪問するたびに、居住していた方の、家を建てた時の喜びを思いました。残された住居跡に長年の夢や希望やアイディアが詰まっていることに気づき、当時の人たちに思いを馳せたのです。残されていたものから、施主の期待に応えようとした、職人たちの心意気を感じ取ることができました。それぞれに個性があり、二つとして同じ家はありませんでした。そして、その後そこで暮していた家族の生活の時間を思いました。

残されていた住居跡には、もう生産されていない材料や今は行われていない職人技が見られました。特に目を引いたのは、かつて盛んに行われていた左官技術の数々です。工場生産品に取って代わられた現代の住宅建築では行われていないものばかりで、できる職人もほとんどいなくなってしまった手仕事の良さが見て取れました。この地域には他のどの地域よりもそれが残されていました。

住居跡からは、残されていたものが限られていたにもかかわらず、海側にはこの地が豊かで農業と漁業の兼業生活の長い歴史があったことや、それに続く西側には新しい住宅地が広がり、自然豊かなこの地域に発展の息吹があったことを知りました。

私はこれらの生活跡がやがて復興工事と共に消滅してしまうことを思い、荒浜や藤塚地域の方々のくらしの証としての調査と、記録を始めたのです。

センターについて

せんだいメディアテークでは、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)を開設しました。

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