●住居廻り
《勝手口》
勝手口ステップ:塗装仕上げ
《勝手口》
勝手口ステップ:塗装仕上げ
勝手口のステップ台の鮮やかな色彩が目に飛び込む。
この部分は、大部分の住宅ではモルタル鏝押さえ仕上げでセメント色。
向こうには幸せの黄色いハンカチが見える。
《勝手口》
勝手口踏み込み:カラークリートモルタル仕上げ
《蔵入り口》
蔵入り口ステップ:人造石モルタル塗り研ぎ出し
《蔵入り口》
蔵入り口ステップ:灰墨(松煙墨)モルタル金鏝押え
蔵の入り口の灰墨モルタルで仕上げられた2段のステップ台。
旧家の屋敷には大きな立派な蔵があったのだろう。
《蔵入り口》
蔵入り口ステップ:モルタル鏝押え
《蔵入り口》
蔵入り口ステップ:灰墨モルタル鏝押え
《塀》
塀:灰墨(松煙墨)モルタル金鏝押え、デザインタイル張り
敷地内に面した通路に、黒い灰墨モルタル塗をバックにして、こんなおしゃれなデザインタイル貼り。
モダンで豊かなくらしがあったに違いない。
《塀》
塀:施釉デザインタイル張り
《駐車場》
駐車場:レンガブロック敷き、コンクリート鏝押さえ刷毛引き仕上げ
《その他》
その他:カラータイルアートデザイン張り
その他:農具入れ? 下肥壷? 温室栽培?
■詳細解説「私と荒浜・藤塚地区とのかかわり」髙橋親夫
私は震災後まもなく若林区荒浜・藤塚地区に入りました。その後、数ヶ月にわたって何度かこの地を訪れ、行くたびに茫然とその光景を眺めていましたが、やがて破壊された家財や建物が取り除かれてゆき、その下から荒浜や藤塚地区のそれまでのたくさんの住居跡が現れました。この地域に地層のように残されていた生活時間や文化の重なりは、佇んでいた私にたくさんのことを語りかけてきました。私は自分の生い立ちと重ねながら、残された「家」の声を聞き取ることに夢中になっていきました。
それぞれの住宅を訪問するたびに、居住していた方の、家を建てた時の喜びを思いました。残された住居跡に長年の夢や希望やアイディアが詰まっていることに気づき、当時の人たちに思いを馳せたのです。残されていたものから、施主の期待に応えようとした、職人たちの心意気を感じ取ることができました。それぞれに個性があり、二つとして同じ家はありませんでした。そして、その後そこで暮していた家族の生活の時間を思いました。
残されていた住居跡には、もう生産されていない材料や今は行われていない職人技が見られました。特に目を引いたのは、かつて盛んに行われていた左官技術の数々です。工場生産品に取って代わられた現代の住宅建築では行われていないものばかりで、できる職人もほとんどいなくなってしまった手仕事の良さが見て取れました。この地域には他のどの地域よりもそれが残されていました。
住居跡からは、残されていたものが限られていたにもかかわらず、海側にはこの地が豊かで農業と漁業の兼業生活の長い歴史があったことや、それに続く西側には新しい住宅地が広がり、自然豊かなこの地域に発展の息吹があったことを知りました。
私はこれらの生活跡がやがて復興工事と共に消滅してしまうことを思い、荒浜や藤塚地域の方々のくらしの証としての調査と、記録を始めたのです。