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『根をほぐす』『In-Field Studioの試み-大地からHumanityを組み立て直す-』アフタートーク小森はるか×佐藤研吾×成瀬正憲

星空と路-上映室-「暮らしの行き先」

 

2018年2月24日(土)、25日(日)に開催した「星空と路-上映室-『暮らしの行き先』」では、記録映像の上映後にわすれン!参加者とゲストの方にご登壇いただき、記録や活動について伺うアフタートークを行いました。

24日(土)17:15からの上映は『根をほぐす』と『In-Field Studioの試み-大地からHumanityを組み立て直す-』でした。
『根をほぐす』は、映像作家でわすれン!参加者の小森はるかさんが記録された映像で、震災後の岩手県陸前高田市で自らの手で種苗店を再建された男性の姿を記録し劇場公開された『息の跡』という作品から、高台移転のために店舗の取り壊しをしているシーンのみを再編集したものです。
『In-Field Studioの試み-大地からHumanityを組み立て直す-』は、建築家でわすれン!参加者の佐藤研吾さんが記録された映像です。佐藤さんが起ちあげられた国際建築学校「In-Field Studio」がインド東部のシャンティニケタンという村で一週間おこなったワークショップの記録で、ワークショップでは、設計・建築の際に必要な、ものがつくられる場所の環境や文化のリサーチに重点を置き、その場所に入り込むというイメージで活動されているとのことです。
今回はふたつの映像を同時上映し、震災後大きく変化しつづける環境の中で、私たちが自分の住む土地に対してどのように関わっていけるのかを考えられるきっかけになればという趣旨のプログラムでした。

トーク登壇者は映像を記録された小森はるかさんと佐藤研吾さん。
進行役は成瀬正憲さんにお願いしました。成瀬さんは山伏として出羽三山で修行をされながら山麓住民の文化や手工芸の技法を学ばれていて、地域文化の継承と展開を探求する日知舎(ひじりしゃ)を運営されていらっしゃいます。

トークの中ではふたつの映像に共通する、環境に自らの手を加えていく姿をヒントに、かつてあった個人の技術が失われたことで変わってきた私たちの生活についてまで話が及びました。自身の環境を自分の手でつくっていくこと、今回の映像でいえば家や橋をつくるということも、ふだんの生活のなかではあまり思いつくことではありませんが、自分の暮らしへの関わり方を少し変えることで土地や地域に対する精神的な距離感が変化するということもあるのかもしれないとトークの時間を通じて思いました。

 

【視聴者のこえ】


・イドと根の深さがよかったな。『息の跡』のラストでみたイドのパイプがやっぱりすごく長かったなあって改めて思い出した。やれることやってこなかったって、ほんとうだよなあ、自分でやらなきゃならないこと、やれることでまだまだやることがあることがいっぱいあることに気づくし、こちらも気づかされる。今どうしているのかも気になる。今は何語をやっているんだろう。新しい場所にたてられたカンバンが、心なしか私にはちいさくうつり、大丈夫だよねって声をかけたくなった。(上映会アンケートから)

・土と手でぬりつけて塀をつくっているのがすごいと思いました。地域への公共の介入については、介入されてからこっちで上書きする方法と介入する前段階?最中からこっちで仕かけられる方法があるのかもしれません。後者の方がコストがないのかも。前者も面白い。タクティカルアーバニズム?(※1)公共=環境については同感しました。里山(環境)と同居していた昔のように共生、公共との同居、共存も考えたい。あと編集もテンポが良くて見やすかったです。(上映会アンケートから)

※1:タクティカルアーバニズム=戦術的都市計画。長期的戦略に基づいた仮設的実践やパイロットプロジェクト(社会実験)を指す。一例としては、公共空間の規制を緩和し使用を見直すなど、都市を活性化しようとする動きにおいて参考となる考え方のひとつ。


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(左)成瀬正憲さん/(中)佐藤研吾さん/(右)小森はるかさん



【プロフィール】
小森はるか(映像作家)
東北で暮らす方たちのことばを残し伝えたいという思いから被災地の映像記録をはじめる。2011年よりわすれン!に参加。2012年より画家で作家の瀬尾夏美とともに岩手県陸前高田市に移住。2015年からは仙台を拠点とし、一般社団法人NOOKを仲間と起ち上げる。2017年、監督作『息の跡』が劇場公開される。

佐藤研吾(建築家/歓藍社)
インド・ベンガル地方で工作を通して大地と人間生活の関係を探求する国際建築学校In-Field Studioを主宰。東京では建築設計を生業とする傍ら、江戸−明治の時代の転換期の都市における動物と空地そして社会システムの連関を研究。福島県大玉村で藍の栽培と染めの作業から震災後の里山の風景を描く歓藍社を仲間と起ち上げる。

成瀬正憲(山伏/日知舎)
2009年より山形県鶴岡市在住。出羽三山で山伏修行を重ねながら、山麓住民に採集文化や手工芸の技法を学び、自ら制作・流通事業を行い、土地の文化の今日的展開を探求する日知舎を運営。知的生産を地域化させ、人間的なるものを異化させる活動を行っている。

【記録映像紹介】
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『根をほぐす』 18分
種苗店を営む佐藤貞一さんは、津波で自宅と店舗を失い、その跡地に自力でプレハブを建て営業を再開した。2016年、高台へ店を新設するため、震災後に続けてきた店舗を自らの手で解体していく。2013年から続けていた佐藤さんの記録の一編です。
[制作]小森はるか
[撮影地]岩手県陸前高田市
[撮影日]2016年6月
[制作年]2018年

こちらの映像はDVD化されており、せんだいメディアテーク 2階 映像音響ライブラリー/視聴覚教材ライブラリーにて、貸出・視聴サービスをご利用になれます。⇒【DVD収録作品紹介】根をほぐす
DVDの貸出状況のご確認には、仙台市図書館ウェブサイトの資料検索をご利用ください。

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せんだいメディアテークでは、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)を開設しました。

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