ごうけいほうもんしゃすう

3.11あのときのホント 今だから言える・聞ける 障害児の親の声(抜粋編)

星空と路(2024年3~4月開催)では、インタビューをした橋本武美さんが特に知ってもらいたいと思ったエピソードを抜粋して、見出しをつけて展示しました。
ダンボール、チラシや包装紙の裏紙を使ったこの展示は、震災当時に街中や避難所の至るところで目にした、手書きの貼り紙を思い出させるような見た目になっています。
なお、本ウェブページのエピソードの文章は、一部要約や省略をしている場合があります。音声の全編とテキストデータはこちらで公開しています。

 

避難
・避難所には行けない
・支援学校は遠いから頼れない
・福祉センターを避難所に?

給水・買い物・行列
・給水車には並べなかった
・並んでるー無理だ
・「ありがとう」あの時の若い2人!

食事
・食べられるものは春雨だけ?
・震災がきっかけで偏食が改善?
・パンを食べさせたかったー!!
・非常食を日頃からトレーニング

薬・病院
・毎日のむ薬がなくなる不安
・お薬は?今は2週間分だけ
・ガソリンはいざという時のために

過ごし方・楽しみ・居場所
・お楽しみがない(泣)
・表情がどんどんなくなってきて...
・居場所がなくて自販機めぐり
・のちのち我慢の反動が...
・放課後デイサービスが再開して...

見通しを立てる・いつもと違う
・淡々とこれからの行動を予告
・とにかく私(母)が取り乱さない!
・書いて説明したら、ちゃんと伝わった

関わり・つながり・支える
・「大丈夫」って言っちゃう
・日頃のコミュニティが大事
・紙パンツが届いた

・情報網は普段から
・周りもどう助けたらいいかわからない
・言いづらい、申し訳ないって思わなくていい世の中になってほしい
・ちょっとした手助けの仕組みがあれば...



<避難>

・避難所には行けない

*Eさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時中2)
 該当箇所(17分47秒)から再生されます。

橋本:避難所は考えてた?
Eさん:ううん、絶対行かないと思う。半壊以上でも行かなかったと思う。
橋本:何がいちばん無理?
Eさん:人が多くていろんな声がすると…例えば避難所でも、教室とか、まぁ教室でも厳しいかもしれないけど、どこか狭い空間でも与えてもらえるんだったらまた別だけど。
橋本:そんなこと絶対無いもんね。
Eさん:絶対無いもんね。体育館とか絶対無理。
橋本:人の多さとか、声がダメなのね。そういうのがあると息子さんはどうなっちゃう?もうパニックになる?
Eさん:パニックになったり、もう大声出したり。自傷する時もあると思うし。
橋本:自傷はその頃あった?
Eさん:うん。
橋本:どんな?
Eさん:(動作)
橋本:あー、自分を叩くということ。そういうふうになっちゃうのがもう目に見えてるから、絶対行きたくないと。


*Dさん:息子さんが知的障害(当時5歳)
 該当箇所(28分45秒)から再生されます。

橋本:避難所とかに行っても、結局お子さんの障害のあれでうるさいとか言われたり…
Dさん:そっか、だよねー。
橋本:やっぱり、迷惑かけてる感じで親がいたたまれなくって避難所を出たとか、いろいろ聞くよね。
Dさん:なるなる。
橋本:うちは避難所に行くことは考えなかった、考えられなかったのね。やっぱり息子が決して落ち着いてないっていうか(笑)やっぱりとてもじゃないけど連れていけないからさー。
Dさん:周りにまだ余裕があって、あたたかい目で見てもらえてるうちはいいけども…
橋本:そう、その時に余裕なんてないさ。
Dさん:ね、もう殺伐としちゃうからさ、そこに火を注ぐようなことはできないよね。

 

*Fさん:全盲のご夫婦、息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時小1)
 該当箇所(7分42秒から)から再生されます。

Fさん:うちの家族はね、私がまず見えないけど、主人も見えないわけ。そして息子が自閉症で、娘は小さかったから、とにかく避難所には行けない。
橋本:そうだよねー。じゃあ考えなかった?
Fさん:考えなかった。
(中略 16分20秒から)
Fさん:避難所は、息子もみんなと一緒にいるっていうのは難しいし、私自身も見えないから、知らない場所では介助がないとトイレ一つ行くにも大変だったと思う。家がしっかりしてたから、かえって家にいられたのがよかった。そしたら別に見えなくても、家の中なら全然電気なくても歩けるから。
(中略 21分30秒から)
橋本:今もしそういうことが起きたとしても、やっぱり難しいは難しいよね。
Fさん:なかなか難しい。
橋本:周りに気を遣っちゃうもんね。全部助けてもらわなきゃならないっていうのが。
Fさん:そう、やっぱり周りにも気遣う、誰かがトイレ行くたびに案内してもらってとか、「じゃあ皆さんご飯取りに来てください」とかって言われても、なかなか行くのが難しかったり。でも今は避難所も盲導犬を受け入れてるから、まぁ本来当たり前だけど……。
橋本:結局3.11があったから、その時にほら、ペットちゃん達は一緒に行けないとか、別の場所にとか、置いてこなきゃいけないとか、いろいろ少しずつ考え始めたもんね。

 

・支援学校は遠いから頼れない

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(28分44秒)から再生されます。

橋本:学校がいつ始まるかも分からないし、支援学校はものすごく遠かったので、学校に何か助けてもらうっていうことは…。もちろんみんな遠くてもスクールバスで通ってたけど。だから学校に頼ることはできない。で、避難所はとてもじゃないけど今行っちゃダメだっていうような状態になってる…。

 

・福祉センターを避難所に?

*Eさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時中2)
 該当箇所(22分21秒)から再生されます。

橋本:例えば障害者センターだったり普段から福祉的な場所は、これから福祉避難所として整備されて、その時には障害のある人たちだけ優先で来てくださいっていうふうになったら、行く?
Eさん:うーん…それって自閉症の難しいとこかなーと思ってた。
橋本:そうなんだよね。
Eさん:障害の人だけの場所であっても、人によるよね。そこにいる人によるというか。
橋本:その辺が発達障害の人たちのポイントで、車椅子で、知的に軽いような人だったら、支援の仕方が明らかっていうか、じゃあトイレをこういうふうにとか、段差をこういうふうにとか。
Eさん:そうそう、明らかなの。
橋本:それで大丈夫だなって思えるなら親も行くけれども、私たちの子どもはそうじゃないから。(避難所の人が)すごく優しく「わー」って迎えてくれても、「じゃあ」(ごめんなさい)ってなるかもしれない(笑)ような、扱いが難しい人たちだから。ちょっと二の足を踏むんだよね。
Eさん:そうそう。
橋本:やっぱり避難所は考えらんないかな。
Eさん:でも、福祉避難所ってやっぱりあれ以降いろいろ話題に出るから、必要だとは思う。発達障害の人でも行ける人はいるだろうし。
橋本:実際に家にいられないぐらいの被害になっちゃう人もいるしね。

 

<給水・買い物・行列>

・給水車には並べなかった

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(41分55秒)から再生されます。

橋本:ガソリンスタンドもうちからすぐ近いんだけど、やっぱり息子を置いてくことは、並んじゃったら何時間かかるか分かんないから置いてくことはできない。で、乗せてったら大騒ぎになっちゃう。待ってる理由が分からないので暴れちゃうから、並ぶことはできない。お水は、徒歩15分ぐらいの学校で給水が始まってるっていう情報もあったんだけど、並べない(笑)並びたいけど並べないーって。8階だし。
高橋:持って上がったりすることも?
橋本:なかなか・・・ご近所のおじちゃんおばちゃんにもちょっとそれは頼めなかったの。
高橋:あのポリタンクねー、8階まではね。
橋本:8階までよろしくとは、ちょっとなかなか言えなくて。お風呂のお水とかはあったけど、飲み水がどんどんやっぱり底をついて、あーやばいなやばいなって。

 

・並んでるー無理だ

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(34分35秒)から再生されます。

(給水所やコンビニなどの行列に並ぶと)
橋本
:息子は、悪気は無いんだけれども前に並んでる人を蹴ってしまう。力の加減が分からない人なので、結構痛い(笑)蹴られた人はすごく「痛っ!」って、大人も「痛っ」って言うような蹴り方をするので、並ぶことができなかった。あー開いてるーでも20人並んでるー、無理だーって。

 

・「ありがとう」あの時の若い2人!

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(38分13秒)から再生されます。

(息子を一瞬だけ家に置いて、マンションの目の前のコンビニに走って)
橋本: 「すいません、障害のある息子がいて…旦那が並べなくて私だけ来たんですけど……」「ごめんなさい、一人2個なんです」って言われて「あーそうですよね」って。まぁ1個ずつ分ければいっか、仕方ないって。今度本人の機嫌がいい時だったら連れて来てみよう、目の前だから。 で、外に出たら若いお兄さん、大学生ぐらいのお兄さん二人が「買えましたかー?」って。その時たぶん私はもう泣きそうな顔してた(笑) 「家族の分、買えましたか?」って聞かれて「いやー2個までだから」って言ったら「ああ、じゃあこれどうぞ」って。お兄ちゃん二人だからおにぎり合計4個なんだけど、もう一人も「これどうぞ」って言ってくれて。
高橋:へえー。
橋本:「あーでもありがたい。本当にいいんですか、ごめんなさい、障害のある息子がいて」なんて。「全然いいですよー」って、2個もらって。でもお兄ちゃんたちのをタダでもらう訳にはいかないから、とりあえずお金だけ。「いらない、いらない」って言われたんだけど、「ごめんなさい、もらってください」って言って。
高橋:いらないって言われたんですね。
橋本:うん。いらない、いいですいいですって言ってくれて、ほんっとに良い子たちで。そうやっておにぎり4個ゲットして帰った時、ああ日本の若者も捨てたもんじゃないなぁって。

 

<食事>

・食べられるものは春雨だけ?

*Eさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時中2)
 該当箇所(5分58秒)から再生されます。

橋本:食べる物は、好きな物とかこだわりの物とかあったよね?たしか。
Eさん:うん、春雨とかラーメンとか。
橋本:そう、その時すごく、春雨とかラーメン。
Eさん:春雨、ラーメン大好きで、そういうものを結構備蓄してたので。
橋本:ああ、良かった。
(中略 11分45秒から)
Eさん:毎日ラーメン食べられるから、食事の面では割と良かったんだと思う。嬉しいっていったら変だけど。
橋本:不満はないのね(笑)

 

・震災がきっかけで偏食が改善?

*Cさん:息子さんが発達障害(当時小3)
 該当箇所(12分49秒)から再生されます。 

Cさん:野菜とか缶詰、なんかキャベツにコンビーフ混ぜたりとか。
橋本
:割と何でも食べれる感じだった?その頃。
Cさん:その頃は結構偏食だったんですけど、もうこれしか食べる物が無いよっていうので、そこから割と食べるようになった。
橋本:大丈夫だった?おー。
Cさん:うん、食べるようになったの。
橋本:何かを感じ取って(笑)これしか無いんだっていう。
Cさん:もう、今これ食べないともう食べられないんだって、たぶん感じたんでしょうね。

 

・パンを食べさせたかったー!!

*Bさん:娘さんが知的障害を伴う自閉症(当時19歳)
 該当箇所(34分32秒)から再生されます。

Bさん:パンを食べたかったねー、食パン無くてねー。
橋本:パンを食べたかった、うちユウヤがすごいパンを食べたかったの。でも買えなくて、なかなか。
Bさん:パンはねー「入ってこないねー」って言われた。
橋本:そうだねー、再開してもお店もだいぶ偏ってた。ほら、やっぱヨーグルトとかそういうのがなかなか買えないとか。
Bさん:うん、あ、牛乳とかね。

 

・非常食を日頃からトレーニング

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(18分56秒)から再生されます。

橋本:火が使えなくても、電子レンジが使えなくても食べさせることができるものを用意してたし、時々食べさせてた(笑)うちの中の避難訓練みたいなことで。「おいしいよねー」「今日のオヤツこれ食べてみようかー」って。
高橋:味もね、トレーニングしておいて。
橋本:そうそう、食べられるものを確かめなきゃいけなかったので。支援学校で、そういう食べられるものをそれぞれの避難リュックにちょっと備蓄しておくようにっていうこととか、PTAでやってたので。本人が食べられないのに乾パンを入れといたってしょうがないんです(笑)そういう障害のある人たちって食べられるものがものすごく限られたりする人が少なくない。うちは割と何でも食べるほうだったので、カロリーメイトとかも食べれるし、固いものでも食べれるし。

 

<薬・病院>

・毎日のむ薬がなくなる不安

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(15分32秒)から再生されます。

橋本:うちは一番最初睡眠障害があって、24時間が普通の人と違うんですよ。普通の人って25時間を頭がリセットしてくれて、リズムを作るとかあるじゃないですか。そういうのができないから。うちの息子は夜3時ぐらいにガバッと起きて、歌う、笑うみたいな、ものすごくうるさくて、マンションでとても困ってて、一番最初はそれで病院にかかり始めたの。
(中略)
だから夜一回だけ薬を飲んでます。 あとは、知的障害も重いので、突然声出すとか突然回るとか、やっぱり社会生活の中で不適切な行動とかって出ちゃうんですよ。光とかもすごく過敏な部分を持ってるので、何に驚いて、何に動揺してるかが親も分からない。だから、急に暴れ出すとか、急に大声出し始めるとか、そういうことを減らすために、その情緒の波をちょっと緩くするような、落ち着く薬を飲んでる人が結構多い。そういうのって3ヶ月分とかもらえるから、震災の時にいっぱいあった家はいいけど……

 

・お薬は?今は2週間分だけ

*Dさん:息子さんが知的障害(当時5歳)
 該当箇所(48分16秒)から再生されます。

Dさん:病院もちゃんと機能してない時だったから、マー君がてんかんで毎日飲んでる薬があったんだけど……(中略)
橋本:その突発性のてんかん、てんかんっていうかひきつけみたいなことね。
Dさん:そう、それの予防のためのお薬だったんだけど、それがね、やっぱり不安になって。
橋本:起きた?
Dさん:あ、起きないんだけど、飲まないとやっぱりいつ発作が起きるか、いつ熱が出るか……しょっちゅう熱出す人だったから分かんなくてさ。原発で一番おっかない時に、やっぱり薬はもらってこなきゃと思って、病院に行ったのは覚えてるよ。
橋本:そっか、薬だけもらいに。
Dさん:うん、受診した。そしたら「薬は最長で2週間分」って言われて、まぁそれでもいざという時に手元にあったほうが助かるから。その頃、最大でも2週間分しかもらえなかったの。
橋本:普通だったら2ヶ月分とかもらえるけど。
Dさん:いつもは3ヶ月分もらってるんだけど。
橋本:今は2週間だけねっていう。

 

・ガソリンはいざという時のために

*Aさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時6歳年長)
  該当箇所(23分21秒)から再生されます。

Aさん:すぐ近くのスタンドは開いてたんですけど、緊急車両だけの対応だけだったんで、本当にしばらくはガソリンが貴重で、そんな迂闊に車を走らせるってことはできなくて。もし途中で子どもが具合悪くなったらその時に病院に行かなければいけないっていう思いがあったので。その時、車に半分ぐらいしかガソリンが無かったんですよ。その時のためにとっておかなければいけないと思って、とにかく車はエンジンもかけなかったですね。
橋本:減らさないように。

 

<過ごし方・楽しみ・居場所>

・お楽しみがない(泣)

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(43分28秒)から再生されます。

橋本:本人のお楽しみみたいなことを探さなきゃいけない、見つけなきゃいけない、私は、って。
スタッフ:それは震災があったからそう思ったってことですか?
橋本:そうそう。本人がどんどん貝のように閉じこもってて、私も助けてあげられない、あなたの好きな物を、チラシも持って来てあげられないし、好きなテレビ番組も見せてあげられない、何を差し出せばいいんだろう、何にもできないや、ごめんっていう。見つけてあげられなかったなーって。

 

・表情がどんどんなくなってきて...

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(26分30秒)から再生されます。

橋本:本人は不思議なぐらいパニックを起こさなかった。何かが起きてる、自分が許容できない何かが起きているんだなぁっていう感じかなぁ。
高橋:日頃の息子さんからしても、落ち着いてたって感じ?
橋本:とてもとても大人しく。
高橋:でもそれはある意味、何かやっぱりちょっと普段と違う緊張状態にはあったんですかね。
橋本:緊張状態、あんまり動かなく、どんどん動かなく、座ったまんまで動かない。表情もどんどん無くなってきてっていう感じだったので……。

 

・居場所がなくて自販機めぐり

*Bさん:娘さんが知的障害を伴う自閉症(当時19歳)
 該当箇所(43分30秒)から再生されます。 

橋本:自販機めぐりとかさぁ。
Bさん:自販機はそうだよね、穴場だって聞いた。
橋本:そう。非常階段で8階から降りてって、ユウヤと一緒にリュックしょって、ちょっと散歩に行こうって、同じルートで自販機めぐりを(笑)あー今日は買えたーとか。
Bさん:そうだよね、学校休みだったし、休みだと日常ができないから、その余暇の使い方困るんだと思うよね。
橋本:困った、ほんっとに困った。

 

・のちのち我慢の反動が...

*Cさん:息子さんが発達障害(当時小3)
 該当箇所(31分46秒)から再生されます。

橋本:反動が出たのは学校始まってから?ちょっと自我が出るみたいな。
Cさん:うーん、そうですね。ちょっと落ち着いてからですかねー。
橋本:それはどんな感じで…パニックが多くなったとか、自己表出みたいなのがすごく増えたとか、そういうのではなく?
Cさん:目の前で何かあったわけじゃないのに、急に「あー!」って声を出して機嫌が悪くなって……だったかなー。
橋本:暴れるとか、周りの人に被害が及ぶとかではない?
Cさん:それは無いですね、うん。
橋本:でもなんか、出せない感情とかフラストレーションがあるんだなーっていう。家でも出たの?
Cさん:家でも…そうですね。急にワーってなって、訳のわかんないことずっと早口で言って、家の中を往復とかしたりとか、バタバタ歩き回ったりしたかな。

 

・放課後デイサービスが再開して...

*Cさん:息子さんが発達障害(当時小3)
 該当箇所(17分10秒)から再生されます。

橋本:あの時、学校が再開するまでどれぐらいかとか全然分かんなかったじゃない。そういうのは、タカミくんはどうだった?
Cさん:やっぱり時間が経って、4月に入ってからくらいかな、やっぱりちょっとイライラするっていうかパニックになるのは……
橋本:見通しが無いし。
Cさん:うんうん、いつ始まるんだろうって。
(中略)
Cさん:ちょっとイライラするというか、パニックというか、なりましたかねー。放課後デイも使えなくて、いつぐらいだったかな、おうちの方が送迎してくれれば大丈夫ですって言われたの。
橋本:来てもいいです、みたいな。
Cさん:うんうん。ただもうガソリンも無かったので、結局放課後デイも行けなかったんですよねー。


*Gさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時小2)
 該当箇所(55分35秒)から再生されます。

Gさん:通ってた放課後デイサービス(放デイ)が割と早くに再開してくれて、ただ送迎はできないし、お昼ご飯は持参になるんで、それでもよければ来てくださいっていう感じで言ってくれたから、
それでやっとスーパーに並んだりとかはできるようになりましたね。ありがたいなーと思って。

 

<見通しを立てる・いつもと違う>

・淡々とこれからの行動を予告

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(9分25秒)から再生されます。

(発災後に放課後デイサービスに息子を迎えに行った時)
橋本:私も、ほんとはスタッフさんたちとかと「あー大変だった、大丈夫でしたか」って、もうワーッてやりたかったけど、本人の前でそれをやっちゃいけないな、本人の前では淡々と、「はい、お迎え来ましたよ、テントにいましたね、じゃあ車に乗りますよ。信号は消えてます。で、電気も全部消えてます。だけど大丈夫です、お母さんと帰りましょう。エレベーターは停まってるので階段で上がります」いろいろ最低限のことだけ予告をして。
高橋:いつもと違うポイントをね。
橋本:いつもと違う、本人が「え?」と思うだろうなっていうことを、パニックを避けるために先に伝えて。

 

・とにかく私(母)が取り乱さない!

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(14分19秒)から再生されます。

(震災当日の夜眠る前)
橋本:これからどうしたらいいのかとか、いつもと違うことを予告しておくけど、私がとにかく取り乱さない、本人の前で取り乱さないことがとても大事だった。(息子が飲んでいる)お薬は寝る薬なので、寝てくれたの。それで、あー寝てくれたー良かったーって。朝になったら電気がなくても大丈夫だから、とりあえず寝てくれたから、あとは少し、明るくなれば着替えもできるし。
(中略)
橋本:夫のほうは仕事で詰めなきゃならないから家にいつ帰れるか分かんない。そうかーって(笑)思ったけど、まあ本人が落ち着いててくれたから、じゃあとにかく私が寝ないでいればいい

 

・書いて説明したら、ちゃんと伝わった

*Gさん:息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時小2)
 該当箇所(1時間3分6秒)から再生されます。

Gさん:お水が出ない間のトイレは、とりあえず誰かが大きい用を足したら流そう、それまでは溜めておこうっていうことにしたんですよ。そしたらやっぱり匂いが結構…換気扇止めてるし、匂いが臭かったから嫌だったのか、息子がトイレじゃない家中におしっこしだしたんですよね。洗面所の手洗いボールとか、ベランダにしたりとか。実家の母にそんな話をちょっとしたら「書いて伝えるとか言ってなかった?書いてみたら?」って。あ、そうだったと思って、苦し紛れに「大きな地震が来てお水の工場が壊れました 建物にヒビが入ってる おじさんがいま一生懸命直してます」って、ツルハシみたいなのと棒人間描いて、「直ったらお水が出ます」って書いたら、何で水が出ないのかやっと納得がいったみたいで、あちこちのおしっこがスッとおさまったんです。 本人は知りたかったんだなと思って。でも知りたいっていうことも伝えられなかったから。
橋本:そうだね。
Gさん:説明をしてあげなきゃいけなかったんだなっていうのが分かって。それで、書いたら伝わるっていうのを実感した。分かってたけど、書いたら本当に本人が……
橋本:ストンとね。

<関わり・つながり・支える>

・「大丈夫」って言っちゃう

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(29分28秒)から再生されます。

橋本
:やっぱり「大丈夫?」って聞かれて、「大丈夫です」って言っちゃうんですよね(笑)みんな大変だろうって思ってるし、うちは今のところ水も食べ物もあるし、本人が家にいられるから、落ち着いてるから大丈夫です、何とかなってますって言ってましたね。いつまで続くか分かんない、その時は分かってなかったから。

 

・日頃のコミュニティが大事

*Bさん:娘さんが知的障害を伴う自閉症(当時19歳)
 該当箇所(47分46秒)から再生されます。

Bさん:うち、マンションでも常々お付き合いしてるから、「食べ物無かったり困ったら言ってー、分けるよー」とかって言ってくれるおじちゃんとかいたから。「水ある?何ある?」とか「あそこであるよー」って言う人いるし。
橋本:そういう横のつながり、大事だねー。
Bさん:だからやっぱり町内会の活動とか顔出しておいたほうがいいかもしれない(笑)
橋本:そういうのはやってた?町内会、役員だったりとか。
Bさん:子供会で役員やってるから町内会も知ってるさ。お祭りの時は必ず手伝わなきゃいけないから。あと小学校の時6年間は毎月草取り行ってたから、みんな知ってる。町内会の民生委員のおじちゃんも知ってるから、うん。子供会で役員してたからみんな顔見知り。

 

・紙パンツが届いた

*Dさん:息子さんが知的障害(当時5歳)
 該当箇所(44分43秒)から再生されます。

Dさん:あの頃、紙パンツは結構悩みの種だったからさ。
橋本:あー、手になかなか入らなかったさね。
Dさん:そう、あの頃ね。もう布パンだった?
橋本:あー……うちは、だって小4だもん。
Dさん:そっかー。だって小4だもんって言われたって、うちまだ布パン半分…
橋本:うちは保育園の時に昼間は大体大丈夫になって、小1くらいの時に夜も大丈夫になったかな。
Dさん:夜も大丈夫になったんだ。やっぱり膀胱の機能の発達とかもあるからねー。
橋本:そうそう。うちの子は濡れたのが分かんない人だったから、布パンのトレーニングパンツが何の役にも立たなかったのよ(笑)
Dさん:へっちゃらなんだ。
橋本:ほら濡れてるじゃん、ビチャビチャって気持ち悪いじゃないって。それが分かんない人だったから、何の意味も無かった(笑)
Dさん:そうなんだ。うちね、中学まで紙パンだったな。
橋本:あ、本当。でもじゃあここで(NPOから提供してもらえて)すごいありがたかったね。
Dさん:そう。あと京都に住んでいる人からもね、紙パンツと食べ物……
橋本:それはお友達?親戚?
Dさん:パパの友達。食べる物とお菓子とかと、あと紙パンツがやっぱり嬉しかった。大きい段ボールで届いてさ。自分はもう大人しくこの災害が峠を越すのを待とうと、静かーにしてたら、周りからいろいろ気にかけてもらえて。

 

・情報網は普段から

*Cさん:息子さんが発達障害(当時小3)
 該当箇所(50分14秒)から再生されます。

橋本:そういう情報網は、災害があったからって繋がれるわけじゃないでしょ。通常からあれば一番良いんだよね。
Cさん:そうですね。やっぱり常日ごろからのコミュニティというか。
橋本:携帯の災害ダイヤルとかそういうのじゃないから、その時に急に、情報無いんですか、繋がれないんですかっていっても、はい繋がりましょうとはならないから。普段からしかないんだよね。
Cさん:うんうん。普段からなんでしょうね。
橋本:私は繋がってたほうで、親の会もいくつも入っていて。でもその中でも入ってくる情報は、その時キューって少なくなったのね。こっちも結局携帯で待つだけ、情報待つだけだったから、それは重要だねー。

 

・周りもどう助けたらいいかわからない

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(28分31秒)から再生されます。

橋本:私がもっとちゃんと周りに、「こういう子でこういうことをやっちゃいますけど、本人に悪気はなく(笑)」みたいなことを、もっともっと、ちっちゃい発信をたくさんしておけば良かったなーって思ってる。小1から遠くの支援学校にスクールバスで行くと、その地域の小学校に通っていないから、そこで結構ストップしちゃう。

 

・言いづらい、申し訳ないって思わなくていい世の中になってほしい

Eさんの場合 息子さんが知的障害を伴う自閉症(当時中2)
 該当箇所(39分53秒)から再生されます。

橋本:さっき言ってた避難所もそうなんだけど、もう少し普通に、こういう支援欲しいんですよって、備えておきたいことですっていうようなことを普通に言える世の中になってほしい
Eさん:そうそう、言うことができないもんね。そこからまず。
橋本:とても言いづらいっていうか、申し訳ないって思ってしまうのはなんだろう。当然あの時はもっと言えなかったよね。電気開通してテレビが見れて、あの津波の映像とか見るようになったら余計、大変な人がいるんだから…
Eさん:そうそう、私たちはそんなこと言えないって思っちゃうよね。
橋本:思ってしまって何も言えなくなってしまう私たちって何なんだろう。助けてもらうようなことがあった方は「うちなんかに申し訳ない」みたいな感覚になるじゃない?ものすごく。それって何だろうなーって。
Eさん:本当はね、それは当たり前のことなんだけど。
橋本:やっぱりその辺は、個人的な見解だけど、宮城・仙台はとても遅れているなって思います。

 

・ちょっとした手助けの仕組みがあれば...

*橋本武美:息子が知的障害を伴う自閉症(当時小4)
 該当箇所(56分19秒)から再生されます。

橋本:SNSとかも発達してきてる時だから、ちょっとした手助けをしてもらうっていう仕組みを、もしかしたら作れるかもしれない。「困ってますー」「その地区のこの人困ってるよ」って発信したら、「同じ地区の私動けますよ」「分かった、水2リットルだけだけど持ってきますよ」とか。何か少し仕組みを作れれば、近くの若手というか動ける人に、水を持ってきてほしいとか、何か望んでいることをどこどこに伝えてほしいとか。(中略)それは出向いてもらわないと叶わないっていうことをやっぱ発信しなくちゃいけないんだなって。避難所ありますよ、障害者はここに行けばいいんですよって行政は思ってるかもしれないけれども、家に出向いてもらわないと叶わないことがいつもある。
高橋:うん、そういうことですよね。情報をもらったとしても、動けない状況。
橋本:それは知的障害者じゃなくてもそう、老老介護のお宅だったり、普段は動けても実はその時ケガをして動けない人もいるかもしれないから、そこは手立てがいるんだなってことだけは、発信したいですね。

 

 

 

***

【来場者のこえ】(星空と路2024の感想より)

・震災時のエピソードを通して自閉症や知的障害についての知らなかったことをたくさん知ることができました。とても有意義なご活動、これからもぜひ続けてください。

・福島から来ました。私にも発達障がいの妹とめいっ子がいます。この企画を読んで、家に帰ったら家族で考え直そうと思いました。発達障がいの子に救われることも多いのも事実です。

・あの日、ニュースや新聞には載っていないけれど、すごく困ったこと、大変なこと、風化させずに記録しようという取り組みが本当に素敵です。いつか風化してしまうこの想いが、記憶が、皆で覚えていることで風化しないように繋いでいきたいと思いました。あのときのホントを知って学んで、胸が苦しくなりました。今大学で学んでいる特別支援教育ももっと深め、こういった事態にも適切に対処できる支援員になります。非常に有意義な活動ありがとうございます。

・大学で特別支援について学び、今現在特別支援学校で教員をしています。今日は旅行でたまたまこちらに寄らせていただき明日。そしていますごく”縁”を感じています。今後災害が起きないなんてことは言えないと思います。震災を、災害を経験した障害児者、家族との生の声を聴くことができたのは私にとって特別支援学校の教員としてどう寄り添っていくべきなのかもう一度考えるきっかけになりました。言葉がまとまらないです。でもこうした声を聴かせてくれて本当にありがとうございました。

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