津波をかぶった若い松林。
津波で流されなかった松も、いちど塩水をかぶってしまうと葉が茶色に変色して枯れゆくと聞いた。
この林も、多くの松の葉が茶色に変わっている。
海岸沿いに防風林として植えられていた松が津波で流され家を襲った。
庭へ家の中へと流れてきたこれらの松は、解体されて庭の隅に集められた。
おかだ夏祭りの日、これらの流木を用いてチェーンソーアートが行われる。
夏祭りのチェーンソーアートは、それ自体を目的としてこの地域に入ってきたものではないと聞く。
これらの流木を解体したり、家の修繕をするためにこの地区を訪れたボランティアさんたちが空いた時間に流木をチェーンソーで彫刻したところ、住民たちに好評だったので夏祭りでもやろうという話になったようだ。
切られてから時間がたち、カビだろうか、緑と白のまだら模様に覆われた断面。
津波の中で流木同士がぶつかり合ってできた痕だろうか。
丸太の一本一本を吟味し、選ぶ。
まず、枝から落としてゆく。
真新しい断面が顔を出すと、木のにおいがつよく漂う。
幹に切り込む。楔を打つ。切り下ろす。
中はきれいなものだ。津波はこの表面を過ぎて行っただけだ。
鳶口をかけ、ひきよせる。
ひっくり返された木と土の間に潜んでいた虫が驚いて逃げ惑う。
数を数え、不足している分を切る。
1時間足らずの間に、1メートル強ほどの大きさに切られた丸太が20本ほど出来上がった。
祭りの当日には、これらの流木がチェーンソーによる木彫になる。
<取材協力> がんばっぺ岡田の会 http://ganbappeokada.sakura.ne.jp