ごうけいほうもんしゃすう

写真を撮って歩いて、気持ちが、心が折れた

3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト 公開サロン @考えるテーブル 2012年5月26日

語り手:村上ゆかりさん/進行・聞き手:佐藤正実さん(NPO法人20世紀アーカイブ仙台)

■歩道に乗り上げて給油を待つタクシーの列

歩道に乗り上げて給油を待つタクシーの列

2011年3月16日 仙台市青葉区中江

[佐藤さん(以下、佐)]村上さんは、震災当日は娘さんの新居探しのために、仙台にはいらっしゃいませんでした。そのため、仙台のことをすごく心配に想っていたんですよね。まず仙台に到着してからの写真になります。

[村上さん(以下、村)]そうですね。羽田空港に泊まりこんで14日の日にやっと仙台に戻ってこれて、15日はまず会社に出て、みんなで片づけをして、16日はちょっとみんな買い出しもしたいだろうから16日だけお休みにしましょう、17日から通常営業しましょう。という風に指示を出してお休みにしました。私も買い出しにと思って、幸町の自宅から三越かどこかに、野菜を買いに行こうと歩いてる途中で、タクシーが、歩道にずっと乗り上げて並んでいるのを撮ったのが、この写真です。このずいぶん先にガソリンスタンドがあるので、それに並んでいるタクシーの列です。

[佐]歩道に車が乗り上げて待ってるなんてこと、まずありませんよね。

[村]うん。まぁいつもと違う光景だったので撮った、っていう感じですかね。

[佐]やっぱり、非日常生活っていうのはこのとき、こういう風に街のあちこちでありましたね。

■営業している個人商店

営業している個人商店

2011年3月18日 塩竈市本町

[村]私は11日、12日を仙台で経験できなかったので、出遅れたように感じていたんですけど。でも14日に、山形空港で降りてバスで帰ってきた時は、明らかに、戦後?って思うような仙台でしたよ。みんなマスクをして、ジャージで、来ないバスを延々と待ってるみたいな感じで。車も全然走ってなくて、バスはいつまで待っても来なかったので歩いて家まで帰ってきたんですけど、何か完全に変わってしまったと思っていました。
それで、17日から仕事を始めました。私の仕事は写真の会社をやっているんですが、こういう報道の写真とかは撮ったことがなくて、通常は広告用写真や、ファミリーのイメージ写真などを撮っている会社なので、報道写真を撮ろうとは全然、頭には浮かばなかったんです。同業の仲間から連絡をもらって、もしも気持ち的に大丈夫だったら、報道写真をちょっと撮ってほしいっていうことを頼まれました。うちのスタッフのカメラマンに1人で行ってもらうのも不安だったので、私も一緒に行って、携帯電話で撮った写真なんです。3月18日は一日中こういう写真を撮って歩いて、この日は、気持ちが、心が折れたというか、被害のひどい所へ行ったので、すごくぐったりと疲れて帰ってきました。

[佐]18日にずいぶんと写真撮られたみたいですけど、どこあたりに行かれたんですか?

[村]報道として分かりやすいように、仙台空港とその付近、塩釜の方です。空港の中にもちょっと入って撮ったりしました。あの、やっぱりうちの会社の車もガソリンがなかったので、遠くに行きたくても、石巻とかまで行けなかったんですよね。

[佐]こういった津波被害があった地域の個人商店が営業しているところを見て、被災の様子だけじゃなくて、街の、活動している様子っていうのも撮っておこうということだったんでしょうかね?

[村]そうなんです。震災の酷い様子っていうのは、報道の人たちが東京からも来て、たくさん撮ってると思ったので、もうちょっと、その目線を違う方向でも撮ろうってことは話しながら撮ったんですね。

■押し寄せたガレキがそのままの店舗

押し寄せたガレキがそのままの店舗

2011年3月18日 多賀城市町前2丁目

[村]これは、私も何度か買いに行った、仙台港の方面の多賀城にあるユニクロのショップです。こんなことになっているということを、娘にもちょっとメールで送ろうと思ったりして撮った写真ですかね。多分ここのユニクロはもうないですね。

■道路に打ち上げられた漁船

道路に打ち上げられた漁船

2011年3月18日 塩竈市海岸通

[村]ここもすごかったですね。この場所って今どうなってるんですか?

[佐]この辺りは、普通の住宅が建ちましたよ。

[村]普通になってましたか。そうですか。

■商品がないスーパーの棚

商品がないスーパーの棚

2011年3月21日 仙台市宮城野区幸町

[村]これは、幸町のジャスコ(大型スーパー)なんですけど、散々並んで入ったのに全然物がないという状態。

[佐]これはなんで撮ったんですか?頭に来て?

[村]いや、こんな光景もないだろうなって思って撮りました。

[佐]こんなに並んだのにこれかよ、っていう感じですかね。

[村]ガーリックオイルだけ買いました。まぁ、でもこんな日々でしたよね、みんなね。

■電気調理器での夕食

電気調理器での夕食

2011年3月23日 仙台市宮城野区幸町 自宅

[村]これは、東京の友人に頼んで、カセットコンロやガスボンベはなかなか手に入らなかったので、ちょっとあったかい食事をしたくって、IH調理器を送ってもらったんですね。それで夕食を作っているところです。

[佐]この時はもう電気が使えましたものね。

[村]そう。電気は早かったですよね。被害が酷かったところは復旧が遅かったですが、仙台市内は電気が早かったので、こういうものは震災の時便利だなと思いました。あと、うちにはウォーターサーバーがあるんですけど、すごく大活躍でしたね。常にお湯を沸かせるし、ボトルに18リットルくらい入るので、給水所に行っても、みんなにうらやましがられて。その頃はまさかそういうことに使うことになるとは思っていなかったのですが、給水所に行って、ボトルをバシャっとサーバー本体にさせばお湯が沸くし、顔とかも洗えるし、なかなか便利だなって思いました。

*この記事は、2012年5月26日にせんだいメディアテークの考えるテーブルで行われた『3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン「みつづける、あの日からの風景」』で、村上ゆかりさんがお話された内容を元に作成しています。


当日の様子はこちらからご覧いただけます。
《考えるテーブル レポート》→http://table.smt.jp/?p=3689#report


【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクトとは】
このアーカイブ・プロジェクトは、東日本大震災で被災した宮城県内各市町の震災直後の様子、および震災から定期的に定点観測し復旧・復興の様子を後世に残し伝えるために、市民の手で記録していくものです。これから市民のみなさまから記録者を募っていくとともに、その情報交換・活動の場を公開サロンとして定期的に行っていきます。これらの定点観測写真は、NPO法人20世紀アーカイブ仙台とせんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で記録・公開し、市民参加で震災を語り継ぐ記録としていきます。

NPO法人20世紀アーカイブ仙台
公式Web:http://www.20thcas.or.jp/

【考えるテーブルとは】
人が集い語り合いながら震災復興や地域社会、表現活動について考えていく場を「考えるテーブル」と題して、せんだいメディアテーク、7階スタジオに開きます。トークイベントや公開会議、市民団体の活動報告会など多様な催しを行っていきます。

センターについて

せんだいメディアテークでは、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)を開設しました。

3がつ11にちをわすれないためにセンター
(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室内)

〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町2-1

TEL 022-713-4483

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