ごうけいほうもんしゃすう

地下鉄運休でシャトルバスを待つ人びとの列、閉鎖された駅や地下通路

3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト 公開サロン  @考えるテーブル 2012年11月24日

語り手:渡辺智美さん/進行・聞き手:佐藤正実さん(NPO法人20世紀アーカイブ仙台)

■封鎖された泉中央駅北口改札

立入禁止表示とロープで封鎖された地下鉄泉中央駅北口改札

2011年3月28日 宮城県仙台市泉区泉中央

[渡辺さん(以下、渡)]私は、もともと普段から食べ物や綺麗な空だとか猫の写真だとか、自分の日常をiPhoneでパシャパシャ撮っていたんです。でも震災以降は「今ここで何が起こってるか」という、情報を発信する写真が著しく増えました。それは、自分のためというよりツイッターを見ている人に情報を渡したかったからなんです。
地震が起きてすぐ、携帯での通話は完全にできなくなったんですけれど、それでも直後の数時間や夜中になると通信はできて、メールやツイッターは見れたんです。なので、3月11日から1週間くらいは、大阪とか東京に住む友人に「○○の情報をください」ってお願いして、まとめて送ってもらったり、仙台市のホームページの震災関連情報を全部文字起こしや写真にして送ってもらうという逆輸入式でゲットしてたんです。その写真や情報がとてもとても役に立ったんですね。
会社が仙台駅西口近くにあるのですが、震災後すぐ自宅待機になりました。これは、3月28日に、2週間くらい続いた自宅待機が明けて、久しぶりに泉中央駅に来てみたら大変なことになってたという写真です。
泉ヶ岳(註1)のほうに住んでいて、どちらにしても当時ガソリンは無かったんですけれども、そもそも車通勤禁止の会社なので、泉中央までバスで出て、泉中央から仙台まで地下鉄に乗るという形で、なんとか行かなければ、という状況だったんです。
同様に、ガソリンが無くてバスに乗って泉中央まで出てくる人たちがいるはずなので、泉中央まで来てから地下鉄は運休中で中には入れないとわかった場合、「じゃあ最初から台原駅に行っておけばよかった(註2)」となるんじゃないかなと思ったんです。報告がてら、その様子を撮った中の1枚ですね。
泉中央駅の北口改札が完全にロープで封鎖されているのを初めて見ました。この時はもう封鎖は知っていたのですが、ぱっと見た時に「あ、立入禁止っていうロープが張られるんだ」と思って。誰が見ても絶対入れないっていうのがわかるので写真に撮ってみようと思ったんです。

註1:仙台市泉区の西北部に位置する標高1175メートルの山。スキー場もある。
註2:3月11日の地震で仙台市営地下鉄南北線は全線運休に。台原駅から富沢駅間は3月14日から運転再開したものの、泉中央駅から台原駅間は修復工事のため4月28日まで運休していた。

■シャトルバス待ちで長蛇の列

泉中央駅構内でシャトルバスを待つ人々の列

2011年3月28日 宮城県仙台市泉区泉中央

[渡]さきほどの改札口写真の地点から10mくらい先に進んだところです。右手、並ぶ人々の右奥に回り込むと駅の中央改札の方です。左側の奥のほうにバスロータリーがあります。なぜ、みんなが並んでるかというと、泉中央駅から台原駅までの間の地下鉄が地震で完全に不通になってしまったので、その区間の代替輸送用のシャトルバスが出ていたからです。
その輸送には、普段泉中央駅を拠点にしている宮城交通や仙台市営バスはもちろん、愛子観光さんとか見たことのないバスも総動員されていて、「えっ、こんなバスがここに!?」っていうような光景でした。たぶんあまりにも混みすぎて、どんどん他からも応援バスがきてたんですね。
私はこのあたりの位置ですけども、後ろにもまだたくさん人々が並んでいます。私がいる位置から右前方向へ進み中央に見える柱まで来ると、そこからさらにぐるっと回り込んでからロータリーに向かって並ぶんです。その右側の写真が切れてるあたりにも、確か、3列か4列になって並んでいるんです。なのでピストン輸送でシャトルバスもどんどん入ってくるんですけど、それでも乗車できるまでに1時間以上待ちました(註3)。逆に写真の赤い矢印方向に北口改札の前を通って長い地下通路を進むと、泉区役所方面に向かう出口に抜けます。一番混み合っていた時は、この中央改札口から区役所に向かう地下通路の階段の外、地上まで並んでたんです。でもこれが、ピークから30分ずれると待ち時間が30分になったりするんですね。なので、「いま来ると1時間待ちですよ」というような情報を、写真だけでなく文字単位でも発信してました。

註3:代替輸送開始当初はその通路だけでなく、バスロータリー周りを含め駅の1階部分がすべて人で埋まり、バスに乗車できるまで1時間半待ちだった。(2011年3月17日の河北新報夕刊より)

■最大余震後に閉鎖されたJRあおば通り駅

JRあおば通駅のシャッターに張られた運休告知

2011年4月8日 宮城県仙台市青葉区中央

[渡]これは4月8日、最大余震のあった翌日のJRあおば通駅での写真です。震度6強の大きな地震だったので、駅自体で何か起きたらしくて閉鎖されてました。私はいつもこの脇の地下通路を通って地上に出るので、あおば通駅の情報を見る機会が多かったんです。なので、自分に直接関係ないんですけれど、JRを使う人も多いだろうと思って、前を通る度に写真を撮ってたんです。当時JRは特に運行本数が少なくなっていて、「この情報があるか無いかで交通手段が変わるので、あおば通駅の情報は役に立った」って皆さんにおっしゃっていただきました。

■自由通路も停電閉鎖

停電で閉鎖された仙台駅周辺の地下通路

2011年4月8日 宮城県仙台市青葉区中央

[渡]これはJR仙台駅周辺の自由通路です。地下鉄仙台駅からS-PAL(JRの駅ビル)に抜ける方の地下通路です。この広い道が停電で閉鎖になるんだっていうことに驚いて撮りました。でも電気点いてるじゃないかとも思ったんですよ(笑)。どこが停電になったんだろうって思いながら撮ったんですけど。
この写真の日はなかったんですけど、すごい水漏れしてた日もありました。水が雨のようにざーっと降ってて、バケツもばーってあって、もう置いたバケツじゃ処理が全然追いついてないっていうような時もありました。なので、この辺は、いろんなことが日常茶飯事で起こってて、震災が起きた後に、ぽろぽろ、歪みが出てくるようなことがいっぱいありました。

■果物が揃いだした仙台朝市

品揃えが復活してきた仙台朝市

2011年3月31日 宮城県仙台市青葉区中央

[渡]これは仙台朝市(常設市場)です。朝市はほんとに早くから開いたのでびっくりしたんです。さすが市場といいますか。再開直後はキャベツが1個400円とか500円とか、もう、すごい料金だったんですよね。写真は3月末で、ちょっと値段まで見えないですけれど、若干落ち着いてきて品揃えが増えてきたなーと思って撮ったんです、確か。
最初の頃は野菜だけとか、品ぞろえがあまり良くないうえに、朝市には食品があるっていうのがわかってみんなすぐ行っちゃったので、行ってみた時にはもう売り切れとか。これもたぶん昼に撮ったんですけれど、昼でもある程度、品物が揃ってきているなーっていう、そういうところですね。

[佐藤さん(以下、佐)]朝市の写真を提供して下さった人ってやっぱり結構多くて。3月14日に朝市はお店を開けているんですが、それがたぶん14日の河北新報に載ったんじゃなかったかなと思うんです。そうすると、15、16、17日って、だんだんだんだん人が増えていってる。朝市で働いている人に提供してもらった3月19日の写真があるんですけど、その人が言うに一番混んだ日だっていうんで、ほんとにあの、歳末の。

[渡]大売り出しみたいな。

[佐]そんな感じになってるんですよ。ずーっともう人の頭しか見えないようなやつが写ってて。なのでこの頃だともう落ち着いてるのかもしれないですけどね。

[渡]果物が増えてるなーって思ったんですよね。バナナとかが、すごい店頭にありますよね。糖分が欲しくなってきてる時期なので。あとは、皮を剥かずに食べれるもの、みかんとかりんごとかだったらたぶんね、かぶりつけるっていうか、そういうものが多かった気がしますね。

*この記事は、2012年11月24日にせんだいメディアテークの考えるテーブルで行われた『3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン「みつづける、あの日からの風景」』で、渡辺智美さんがお話された内容を元に作成しています。


当日の様子はこちらからご覧いただけます。
《考えるテーブル レポート》→http://table.smt.jp/?p=3701#report


【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクトとは】
このアーカイブ・プロジェクトは、東日本大震災で被災した宮城県内各市町の震災直後の様子、および震災から定期的に定点観測し復旧・復興の様子を後世に残し伝えるために、市民の手で記録していくものです。これから市民のみなさまから記録者を募っていくとともに、その情報交換・活動の場を公開サロンとして定期的に行っていきます。これらの定点観測写真は、NPO法人20世紀アーカイブ仙台とせんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で記録・公開し、市民参加で震災を語り継ぐ記録としていきます。

NPO法人20世紀アーカイブ仙台
公式Web:http://www.20thcas.or.jp/

【考えるテーブルとは】
人が集い語り合いながら震災復興や地域社会、表現活動について考えていく場を「考えるテーブル」と題して、せんだいメディアテーク、7階スタジオに開きます。トークイベントや公開会議、市民団体の活動報告会など多様な催しを行っていきます。

センターについて

せんだいメディアテークでは、市民、専門家、スタッフが協働し、東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォームとして「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)を開設しました。

3がつ11にちをわすれないためにセンター
(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室内)

〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町2-1

TEL 022-713-4483

Copyright © 2024 sendai mediatheque. All rights reserved.