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雄勝の道ゆき3「峠の向こう、つづく営み」

峠となぎさの道ゆき

 

仮設商店街にて(2019年)


一方、奇跡的に震災による大きな被害を免れ、他の地域では失われた三陸の浜の家なみが残されている集落が雄勝にもあります。中心部から太平洋に向かって伸びる半島部の先端部に位置する大須浜もその一つです。私が初めて雄勝町を訪れた時には石巻駅からこの大須浜まで直通の路線バス(当時、宮城県内最長の一般バス路線)が走っていて、大須浜には小さな車庫がありました。


大須浜には被災前から大きく変わらない集落の家並みもそのままに、雄勝石で葺かれた漁師さんの家々や木倉が立ち並んでいます。さらに丘の上には集落のシンボル的存在として、近年「恋人する灯台」(日本財団)に認定された大須崎灯台があります。この集落を歩くと不思議と懐かしさを覚え、晴れた日には金華山を望む広大な太平洋の潮騒に目を閉じると、心に深い落ち着きを覚えます。

 

大須崎灯台から港を眺めるとハート型に見えることから、
2018年に「恋する灯台」に認定され新たな観光名所となった。

 

 

 

 


さて、2020年4月には中心部に防潮堤に沿って8.9mかさ上げした土地に新たな観光・行政の拠点がオープンします。そこには新たに観光物産交流施設や2代目となる雄勝硯伝統産業会館が開設され、現在の仮設商店街も移転して来るようです。それにしても、高い防潮堤と高台移転した中心部の風景は、遠くから見るとまるで城塞のようで、被災前の面影は全くと言ってよいほど消えてしまいました。


しかしながら、そうした大規模な土木工事によるまちづくり以外にも、雄勝の復興を支える動きが民間の手で展開されてもいます。例えば雄勝の自然を活かした体験型施設が全国的な人気を集めたり、新たな民宿がオープンしたり、雄勝硯の生産拠点が復活したりと、新たな地域の希望が多くの人の手によって広がりつつあります。失われた暮らしと風景の大きさにははかり知れないものがありますが、雄勝を訪れる人が「再び」でも「新たに」でも増えることで、未来につながる営みと賑わいが生まれることを願って止みません。


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