語り手:足立千佳子さん/進行・聞き手:佐藤正実さん(NPO法人20世紀アーカイブ仙台)
■中学校前に張られた給水案内
[足立さん(以下、足)]うちの娘が東仙台に一人暮らしをしていて、電話も通じないので心配だったんです。車がなかったので自宅の岩切から歩いて見に行ったら、こんなのが中学校前に貼ってあるので、あら、世の中って水がないのねと(笑)大変だわと思いました。
私は岩切に住んでるんですけど、そういう支援とか給水の情報は来なかったんですよ。だから自力で探さなきゃいけなくて、嫁ぎ先の本家の裏山の沢水を汲みに行って日がな一日タンクに積んで戻ってくる生活をしていたんです。ちょっと東仙台の街に行ったら、「ああ世の中は給水してもらえるんだ、いいなー」「18リットルもらえればいいさなー」とかそういう思い。あと娘にも教えようというのでこれを撮ったんですね。
■塩むすび
[足]私は当時、フリーランスで仕事をしていて、色んな契約をして月末や翌々月にお金が入るようなお仕事してんたんです。3月11日にこういうことになり、3月の仕事が全部ストップし、仕事もキャンセルしたので3月分のお金が入らない。あるいは2月のお金も3月に入るかどうかどうかわからないという状況になり、お金がないと思ったんですよ。それで何か商売しようと、自分の活動費は稼ごうと。
[佐]サラリーマンとはそこが違う。
[足]そこが違う!それで、家には米があったんですよ。米はあるんですけど電気ないから炊けないんですよ。友達が仙台駅東に住んでいて、駅東で市を始めてたんですよ。そっちは電気も水もあるけど、逆に米がないってことでニーズのマッチングを致しまして、私がこの日、朝にお米を5kgか10kg背負って歩いていったんですね。
それで駅東の方に着いてお友達にお米を炊いてもらって、おにぎりを握りました。塩むすびにすれば、お茶漬けにもできるし、チャーハンにもできるし、いいんじゃない?ってことで、売らせて頂きました。
■3月末のスーパーの店頭
[足]ようやくお金も稼げるようになり、よしお買い物に行こうと、利府のジャスコ(大型スーパー)に行ってみたら、あら何も売ってないわよという感じでした。他にも、これも売ってない、これも売ってないってのがいっぱいあり、逆にいっぱい在庫があるのが乾電池とかガスコンロとか、そういうのが特設売り場みたいになっていてなんか世の中のニーズって変わったのねーみたいに感じて思わず撮っちゃったんですね。
■旧鱒渕小学校でのボランティアスタッフのミーティング
[足]ガソリンがなかった時期だったんですけど、おにぎりを売って4000円くらいお金をゲットしたんですね。利府ジャスコに行ったら何も買うものがなかったんで4000円まだ残ってたんですよ。
この写真の前日に、ようやくガソリンを20リットル入れることができたんです。このガソリンを有効に使おうと思ったんです。うちにいても仕事も何にもないし、店にも物が売ってないし、なんにもやることないやと。ちょうど登米市の旧鱒渕小学校という旧東和町にある廃校になった小学校の体育館を拠点に、ボランティア活動しているよって情報が入ってきたんです。誰か現地コーディネーターをできる人はいないかなっていう相談のメールがきて、ああじゃあ、これかなと。
この鱒渕小学校があるその登米市の旧東和町米川地区で、ここの地域づくり計画のコーディネーターを3年間くらいやっていた場所だったので馴染みもあったので、じゃあ行こうと言ってボランティア団体に飛び込んでしまいました。
[佐]これはいつまで続いたんですか?
[足] 1ヶ月くらいは体育館で寝泊まりをしていました。その後はちょっと活動のフィールドを変えていたけど、今活動している仙台が週3日か4日、で登米が週2日か3日、週末には南三陸とか気仙沼に行くような感じの生活が、これがきっかけで始まっています。
[佐]今も続いているんですか?
[足]このボランティア団体は解散しましたけれども、私の方は女性の手仕事支援、コミュニティ・ビジネス創出プロジェクトって形で、プロジェクトの方はずっと続いてやっています。
*この記事は、2012年12月22日にせんだいメディアテークの考えるテーブルで行われた『3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト公開サロン「みつづける、あの日からの風景」』で、足立千佳子さんがお話された内容を元に作成しています。
当日の様子はこちらからご覧いただけます。
《考えるテーブル レポート》→http://www.smt.jp/thinkingtable2012/?p=2001
【3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクトとは】
このアーカイブ・プロジェクトは、東日本大震災で被災した宮城県内各市町の震災直後の様子、および震災から定期的に定点観測し復旧・復興の様子を後世に残し伝えるために、市民の手で記録していくものです。これから市民のみなさまから記録者を募っていくとともに、その情報交換・活動の場を公開サロンとして定期的に行っていきます。これらの定点観測写真は、NPO法人20世紀アーカイブ仙台とせんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」で記録・公開し、市民参加で震災を語り継ぐ記録としていきます。
NPO法人20世紀アーカイブ仙台
公式Web:http://www.20thcas.or.jp/
【考えるテーブルとは】
人が集い語り合いながら震災復興や地域社会、表現活動について考えていく場を「考えるテーブル」と題して、せんだいメディアテーク、7階スタジオに開きます。トークイベントや公開会議、市民団体の活動報告会など多様な催しを行っていきます。