震災後、石巻市にある河北中学校に間借りするかたちで学校生活を送る雄勝小学校の子供たち。
そうした中で、雄勝法印神楽の伝承のための御神楽クラブは、秋に合同開催される河北中文化祭と雄勝小学芸会のひと演目として、神楽を舞うことになっています。少ない練習時間の中で子供たちは保存会の先生に教えてもらいながら、本番までの時間をそれぞれ過ごそうとしています。
【雄勝小学校御神楽クラブ】
大人も子供も初めて学ぶ舞が「初矢(しょや)」。高天原に最初に現れた神・天(あまの)御中主(みなかぬしの)神(かみ)が、混沌とした中から天と地を創造する物語だ。
奉納神楽の最初に舞われる「初矢」には、手振りや足の運び、首の振り方など、雄勝法印神楽の基本の所作すべてが盛り込まれている。
入門者は週3回1カ月間、囃子の音に合わせて自然に体が動くまで、繰り返し「初矢」を舞う。邪気を払う足拍子、爪先立って回転した足の着き方、基本的な足遣いは座布団1枚からはみ出さないのが上手の証し、というのが先人の教えだ。
石巻市立雄勝小学校御神楽クラブの子供たちも、最初に学ぶのは「初矢」。1970年代創部の伝統あるクラブは、雄勝法印神楽保存会の指導で学んだ成果を毎年10月19日、小学校の隣ある新山(にいやま)神社の例大祭で披露してきた。2011年3月11日、大地震後、雄勝小学校の子供たちが最初に避難した新山神社は津波で流失。震災後も練習を続けた御神楽クラブの晴れの舞台は、移転先の石巻市立河北中学校の文化祭と合同で行われた10月22日の学芸会だった。
文 奈良部和美(ジャーナリスト)
【取材協力】
石巻市立雄勝小学校、雄勝法印神楽保存会
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